この秋転職し、フルタイム正社員×専門職へと大きなステップアップを迎えます。その決断の後押しにもなったという家族のポジティブな変化とは?
再就職によって家族にも訪れたポジティブな変化
(家族で阿波踊りに参加したときの一枚)
ブランク時期を経ての再就職には、家事や育児の家庭内での分担が欠かせません。Warisワークアゲインにも、「再就職したいけれど家庭との両立がうまくいくか不安」「家族からの理解がなかなか得られない」といったご相談の声もよく届きます。
諸井さんも「自分が働き出して、家庭がちゃんとまわるのか」という強い不安があったため、まずは「週3」「時短」「契約社員」という勤務条件で働き始めました。
再就職先での業務に慣れるにつれ、もうちょっと仕事の比重をあげていきたいと考え始めた頃、諸井さんは家族にひとつの提案を投げかけました。
「勤務時間を増やしたいと思っている。でも、現状のままだと家のことがまわらないから、お手伝いさんを頼もうと考えているんだけど、どう思う?」
夫と子供たちは諸井さんが生き生きと仕事に取り組み、家でも専門知識を深めるための勉強をしている姿をみてきており、諸井さんの再就職をポジティブに受けてとめてくれていたようだったといいます。しかし、3人ともお手伝いさんを頼むことには反対でした。
そこで、諸井さんは自分が担ってきた家事をすべて紙に書き出し、A4サイズ5枚(!)にもなったそのリストを家族にみせました。
「お手伝いさんを頼まないなら、みんなにももっと家事をやってもらわないと。このリストから自分ができるものを決めて、選んでくれる?」
「自分たちで決めたという意識を持って欲しかったから」と家事分担を相談する場にはあえて加わらず、リストにある家事をどう分担し、それぞれどの家事にコミットするかを夫と子供たち3人で話し合い、決めてもらいました。
この方法が功を奏したのか、この話し合いの後から、家事に対する家族の意識が「手伝う」から「自分がやるべきこと」に変化していきました。今では、諸井さんが知らないところで3人でお手伝いポイントアプリを活用し、ゲーム感覚で家事に取り組んでいるそうです。
このほかにも、諸井さんが転職を決意できた背景がありました。
1つは、コロナ禍でリモートワークが浸透し、夫の働き方にも変化が起こったこと。「育児や家事に協力したい」といいながらも、残業や出張にと多忙で不在がちでしたが、一部在宅で仕事をできるようになり、家にいる時間が増えました。諸井さんの今回の転職先でもリモートワーク対応が可能だったことも、大きな後押しになりました。
もう1つは、子供たちが成長し家事の戦力となってくれるタイミングとなっていたこと。実は、諸井さんは2人が幼い頃から家事への参加を積極的に促してきました。特に長男は「ママの手伝いをしたい」とよくいってくれていたものの、幼いうちは却って手間がかかってしまうもの。つい「自分ひとりでやったほうが速い!」となりがちですが、なるべく子供たちに任せるようにしてきました。仕事復帰を見据えてのことではなかったものの、結果的には今の2人の頼もしさが諸井さんの背中を押してくれたといいます。
「わたしの再就職が家族に負担をかけるんじゃないかと不安もありました。でも、いざ仕事復帰してみると、仕事にやりがいを持って生き生きと働いて、いつもご機嫌でいること自体が家族にもいい影響をもたらすんだな、とわかりました。家庭内でみんながより自律的になり、関係性がいい方向に変化しました」
夫とはビジネス談義で盛り上がったり、時には諸井さんが詳しいファイナンス分野でアドバイスをすることも。収入源が増えたことで、経済的な大黒柱がひとりではなくなり、夫の精神的な余裕にもつながっているのだとか。
そしてなにより諸井さんが嬉しかったのは、長女が自分をロールモデルとしてみてくれていること。学校の課題作文で「マイヒーロー」という題名で「自分も母のように結婚・出産・育児をしても、仕事を通じて、人々の役に立ち続けられるひとになりたい」と書いてくれたのだそう。
こうした家族のポジティブな変化に加え、リモートワークの普及も追い風となり、諸井さんは「これならもっとできる」と転職に踏みきることを決めました。
再就職から3年 さらなるステップに踏み出そうとする諸井さんが見つめる未来
再就職してから3年、諸井さんはふたたび新しいスタートを迎えます。この秋、現在の職場を退職し、スキルを生かせる専門職、そしてフルタイムの正社員として、M&Aアドバイザリー会社に転職されます。
「現職を離れるのはとても名残惜しいですが、今回の転職でようやく、業務内容だけでなく、その他諸々の条件にも納得がいく環境を手に入れることができました。一度は諦めかけたキャリアの道がふたたび開けたことを、本当に嬉しく思っています」
家族を最優先にする時間を過ごしたのち、大きな不安を抱えながらも、まずは動き出すことを大事にして一歩踏み出した諸井さん。再就職先で目の前の仕事に懸命に取り組み、できることを増やし、自ら手を挙げて挑戦したことで、つぎに進みたい道が見えてきたといいます。諸井さん自身の変化によって、家族との関係性もポジティブに変わっていきました。
「ブランク期間をネガティブに捉えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、わたしは人生に彩りを与えてくれる時間だと思っています。母親は家庭内で太陽のような存在でありたいですよね」
自身のキャリアに邁進しつつ、「同じようにブランク期間を経て再就職に踏み出そうとする方々を応援したい」と諸井さん。
「同じ経験をした一人のビジネスパーソンとして、再就職をした方への理解や支援を社会や組織のなかで拡げていきたい」
諸井さんの視線はすでにさらなる先を見つめているようでした。