11回目となるワークアゲインストーリーは、ワークアゲインの再就職イベントをきっかけに再就職した諸井美佳さん。前後編にてお届けします。
(「母の日」の一枚。夫と子供たちから花束とメッセージカードのプレゼント)
中2の長女と小5の長男の2児の母である、諸井美佳さん。この秋、新しいスタートを迎えます。スキルを生かせる専門職、かつフルタイムの正社員として、M&Aアドバイザリー会社に入社予定とのこと。
夫の駐在帯同と子育てによるブランク期間を経て、諸井さんが再就職をしたのは3年前。当時は週3・時短・契約社員という条件での仕事復帰でした。
ブランク期間後の再就職には、あらゆる不安がつきまとうもの。諸井さんはどのようにして再就職に踏みきり、さらにその後どういう経緯を経て、大きなステップアップとなる今回の転職に至ったのでしょうか。また、その決断の後押しにもなったという家族のポジティブな変化とは?
諸井さんにお話を伺ってきました。
「環境が整うのを待っていても、そんなときはこない。とりあえず動き出してみよう」ブランクを経て、再就職への一歩
諸井さんは大学卒業後、金融機関およびシンクタンクに勤務しました。その後、夫の駐在帯同に伴って仕事を退職し、米国に生活の拠点を移すことに。米国滞在中に2人の子供を授かり、異国での生活と子育てに奮闘する日々を送っていました。仕事が大好きでいずれ復帰しようとは思っていたものの、「今は家庭を最優先にする時期」だと捉えていました。
駐在期間を終えて帰国したのち、「いざ仕事復帰を」という気持ちもありながら、まずは家族の生活基盤を整えることに注力することに。夫が再度駐在となる可能性が浮上したことや、長女の進学のタイミングもあり、「今はまだ自分が動くべきタイミングではない。もう少し待とう」と家族を優先させる生活をつづけていました。
しかし、そうこうするうちにあっという間に数年が経過し、諸井さんはふと気づいたのだそうです。
「このまま家族を最優先にして、自分が動き出せる環境が整うのを待っていても、準備は永遠に整わない。とりあえず、再就職に向けて動き出そう。また駐在となったら、そのときに考えればいい。そうわりきってみることにしました」
とはいえ、再就職にまつわる不安はとても強く、「ブランク期間が長い自分に再就職先がみつかるのか」「いざ仕事が決まってもちゃんと働けるのか」「家族のことをすべて自分が担ってきたのに、働き出して家庭がまわるのか」など、いろいろな気持ちがよぎったといいます。
そうした不安を抱えながらも「まずは動き出してみよう」と再就職についての情報収集をはじめ、その一環としてWarisワークアゲインの再就職イベントに参加。「再就職活動はどうやって進めたらいいのか」「そもそもどういう準備が必要なのか」そうした全体像を理解するのが目的でしたが、この場がきっかけとなり、諸井さんは再就職先の企業に出会うことになります。
Warisワークアゲインから打診を受けたのは、社会人向けのビジネススクールでの教材開発サポートの仕事。その時点では、まだ具体的な求職活動を始めておらず、求職情報を目にしたり、どんな仕事をしたいかまでは考えていない段階でした。ただ、提案された仕事に対して「面白そうだし、前職の経験を生かせるかもしれない」というフィット感があり、まずは応募してみることに。
子供のサポートや家事との両立に不安があったため、最優先事項は勤務時間。一方で、それ以外の条件はなるべくオープンでいようと考えていたそうです。選考は順調に進み、細かな条件調整を経て採用が決定し、仕事復帰をすることになりました。
自ら手を挙げてプロジェクト・マネジメント業務に立候補 さらなるステップへとつながった転機
再就職後、まず戸惑ったのは、勤務先の職場で使われているオフィス系のITツール。いまでは難なくこなしているオンライン会議のセッティングやクラウドでの文書共有なども、最初は使い方を学びながら慣れていきました。
もうひとつ驚いたのは、職場で飛び交う社内用語。さまざまな名称をアルファベット3文字で表す略語は、まるで外国語のように聞こえたそう。とはいえこれらを覚えないと仕事にならないため、オリジナルの単語帳を作成。そこに並んだ用語は、なんと40個以上にも上りました。
一方で、職場環境や仕事には「意外なほどスムーズに馴染めた」といいます。
「最初は、数ある業務からできそうだなと思ったことから優先して取り組むようにしました。ひとつなにかできると、周りの方にも『あ、この人こんなことができるんだ。じゃあ、この業務も任せてみようかな』って思ってもらえますよね。そうやって業務の幅を広げていきました」
上長とのコミュニケーションも丁寧にとるよう心がけ、仕事の進捗ややってみたい業務などを都度伝えるようにしました。
そうして業務内容が広がり、職場の人間関係も円滑に進むようになった頃、諸井さんはもう一歩踏み込んだアクションを起こします。それまでは教材開発のサポートが主な業務でしたが、自ら手を挙げて立候補し、教材開発のプロジェクトをマネジメントする業務も任されるようになりました。
講座をブラッシュアップしていくためには、講師陣の意向を組みつつも、受講生の要望に応えられるよう内容を調整する必要があります。このビジネススクールでは講師に著名な専門家を招いていますが、そうした講師陣に対しても対等な立場で率直な意見を伝え、時に議論をしながら進めていかなくてはいけません。講座のスケジュールは事前に決まっているので、タイトなスケジュール管理も必要となります。
なぜあえてそうしたマネジメント業務を進んで引き受けたかを問うと、こう返ってきました。
「前職では、ポジションに関わらず、とてもオープンに意見を言い合う職場を経験していました。そのせいか、せっかく知的かつ情熱的な人たちが集まっているのに、組織内のコミュニケーションに滞りがあるように感じて、すごくもったいないなと思ったんですよね。みんながもっと意見を交わして活発な議論が起これば、もっと面白いことが起こるんじゃないか、もっといい講座を作れるんじゃないかと」
諸井さんの積極的な働きかけもあり、講師陣やスタッフ、時には生徒さんも交えてのディスカッションが活発になっていき、「仕事により手応えを感じるようになった」といいます。そして、「講座で説かれているファイナンス理論を実践したら本当にうまくいくんだろうか?実際に試してみたい」という気持ちが徐々に強まり、諸井さんはさらに次のステップへをキャリアを進めることになります。